入管法の定義では、
「本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能」とされています。
すこしややこしい言い回しですし、いろんな意味でとることもできる表現ですね。
そもそも、ほとんどどんな仕事でも”熟練”の技術は必要ですので、どんな仕事分野でも対象になり得るかという疑問も湧きます。
理屈上は、そうです。
が、
「技能」ビザについて、どのような職種が当てはまるかが例示されていており、実際これら以外の分野でのビザ取得はほとんど例がないと言っても良いでしょう。
以下の職種が挙げられています。
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○料理人
○建築・土木
○外国特有の製品の製造・修理
○宝石・貴金属・毛皮加工
○動物の調教
○海底掘削
○航空機の操縦
○スポーツの指導
○ワインのソムリエ
確かに「産業上特殊」といえそうなものばかりです。
法務省が公表しているデータによれば、令和3年6月末時点で、この技能ビザの外国人は、39,603人となっており、外国人全体の中で1,4%を占めるに過ぎません。
この内、大部分が、中国、インド、タイなどの外国料理人だと考えられます。
産業上特殊?
「産業上特殊」であるとは、具体的はどういうことなのでしょうか?
大きくわけて2つの意味があると言われています。
外国にしかない技術であること(日本にその分野にて熟練している人がそもそもいない)。
外国にしかない技術ではないが、日本のレベルに比べて、非常に高いこと。
このため、熟練した技術であればどんな分野でもいい、ということにはなりません。
さきほどの例で考えましょう。
○料理人→中国、インド、タイの料理人等で、現地で専門的にコックの訓練・経験を長年積んできた料理人。
○スポーツの指導→野球やサッカーなどの指導者。
すこし無理な分け方でもありますが、単純化すれば…
料理人については、外国にしかない技術であると言え、
外国にしかないわけではないが、歴史的に日本国内の経験値は外国に比べて浅く、総じて外国のレベルのほうが高いと言えます。
実務経験年数は必要
熟練していることを証明するために、長年その分野に従事してきたという経験が必要です。
例えば、外国料理人・動物の調教・掘削工は10年、スポーツ指導は3年、といったようにそれぞれの分野で、年数が定められています。
もちろん経験だけでは不十分です。分野によっては、専門の教育機関で理論から学んだ実績や国際的なコンクールでの優秀成績がないと認められない、というものもあります。
一時は、経験の偽装が大問題になった
「技能」ビザの大部分は、外国の料理人です。
料理人は、原則10年の経験があれば、認められうるのですが、外国での勤務経験を実際に調べるのはなかなか難しいことであることは、容易に想像できます。
このことを利用し、一部の外国人、そして日本の受け入れ企業(レストラン)が、経験があるという嘘の経歴書をつくり、このビザを取得するというような事件もありました。
現在では、技能ビザなど経験年数を自己申告(外国の企業による証明であっても、ほぼ自己申告に近いですからね)で証明する類の書類については、詳細に裏付けを確認されるようになっています。
春野行政書士事務所