2019年からスタートした「特定技能」ビザ。
このビザは他のものと大きく違う点があります。
それは、「日本の働き手不足を補うために、作られたビザ」ということです。
日本で少子化、高齢化の問題が顕在化して久しいですが、国の産業を支えるために、外国人の力を借りることを制度上はっきりと認めたことは、これからもどんどん人口減少が進む日本にとって、非常に大きな意味があるといえます。
どの産業分野で受け入れられるのか?
人材不足が大きな課題となっている日本の産業分野は、たくさんあります。
しかし、どの分野からもくまなく受け入れられるようになるほど、制度整備はすすんでいません。
次の14の分野で、この特定技能ビザをスタートすることになりました。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電気・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食
これら以外の産業分野でも人材不足が深刻なところはありますが、2022年現在では、上記14産業分野となっています。
どんな外国人でもよいのか?
人材不足の産業分野であれば、文字通り、猫の手も借りたいような状況が続いているかもしれません。とにかくだれでもいいからと、日本国内で募集をかけても応募すらしてもらえない、と危機感を募らせる経営者の方も多いかと思います。
しかし、人材不足のためのビザなんだから、外国人なら誰にでも与えますよ、という話では、全くありません。
雇用する外国人が、「相当程度の知識又は経験を必要とする業務」に携わることが求められているため、この外国人にも一定の技術レベルが必要とされています。
具体的には、外国人が、その産業分野での知識や経験、そして日本語の能力、が必要とされていて、各種の試験に合格していることが条件となっています。
外国人を適正に雇用できる環境はあるか?
外国人にかぎらず、誰かを雇用する際のルールは、労働法から、労災保険、雇用保険、各種社会保険など、様々あることはご存知でしょう。
外国人の雇用経験がある企業なら、入管法を守ってきたかも非常に重要です。
当たり前のことのようですが、これらすべてを規定通りに守ってきた会社であるか、どうかが問われる、ということです。
雇用契約に問題はないか?
外国人労働力=安い労働力、という考え方は、今だ存在しているかもしれません。
しかし、特定技能ビザで雇用する外国人には、労働基準法や最低賃金に関する法律がすべて日本人と同じように適用されるばかりか、「相当程度の知識または経験を必要とする業務」なのだから、それに見合った給料を支払う必要があります。
残業代に関するルール、休日に関するルール、解雇に関するルールなど、守るべき最低基準はすべて守っていなければなりません。
日本人には適用されるが、外国人に適用されない、ルールは断じて認められません。
支援計画に無理はないか?
特定技能ビザを取得する外国人には、一種の”特別待遇”をする必要があります。日本人を雇用するときには、考えすらしないことかもしれません。
それが、「特定技能外国人支援計画」です。
特定技能外国人が、いち早く日本の生活に慣れることができるよう、どのようにサポートするつもりであるかの計画を立て、計画書にまとめる必要があります。
計画の雛形は、あらかじめ定められており、それに沿った計画で問題ありませんが、外国人を雇用して「あとは、淡々と働いてくれよ」というわけにはいかないということがわかります。
実際に、どのようなサポートをするべきかを見ると、非常に丁寧な内容であることがおわかりいただけるかと思います。
特定技能ビザを取得して、外国人を雇用するには、それなりの準備と計画が求められます
特定技能ビザの制度ができて、3年ほど経過しました。
もともと人材不足を補うため、という理由があったことから、人材不足が一定緩和された分野では、特定技能人材の受け入れ自体をストップする動きも出てきており、今後も頻繁に調整が加えられていくことでしょう。
特定技能には1号と2号があり、2号に移行すれば、家族を呼び寄せることができるほか、永住ビザを取れる可能性もあることから、「実質的に移民を受け入れる」ためのビザではないかという意見もあり、今後もこの特定技能ビザの動向には注目すべき点があります。
春野行政書士事務所 代表 春野